<本藍(天然藍)とは>

『藍』と言われるものは…

【すくも藍】

徳島産の蓼(たで)を発酵させた物。蓼藍、阿波藍とも言います。

【インド藍】

南方形のマメ科の植物で色素を沈殿させこれを乾燥させブロック状に固めた物。

【琉球藍】

沖縄、台湾、東南アジアに生息する、キツネノマゴ科の植物で小低木。沖縄の紅型(ビンガタ)なども染められる。木藍、馬藍とも言います。

これらが有名ですが、それぞれ染料にする植物も製造方法も違うため藍の色調も違います。
国内では本藍というと、すくも藍の事をイメージします。また古く綿物を国内で染めていたのも、
すくも藍であり、世界からジャパンブルーと称されている物です。

【化学藍(染料名・・・インディゴピュアなど)】

本藍の色素の分子を化学合成しコピーした物。
化学藍はインディゴピュアが代表的な物だが他に、ヒアインディゴ、ニアインディゴなど色調が異なる化学染料もあります。
1880年ドイツで合成に成功し世界に広がり、
この化学藍(インディゴピュア)と共にジーンズの歴史は初まります。
フランスのドュニーム地方で表側の縦糸をインディゴピュアで染めた物を使い、
裏側の横糸は白糸を使い織機に掛け綾織にした生地を生産し、
これを生産地の名前を取りデニムと言われるようになりました。

<本藍と化学藍の違い>

藍は染め液の中では1つ1つ散々の状態で黄色(図1) 。
これが空気に触れ酸化することで水素結合を起こし、2つの粒が手をとり合い1つになり青色となります。
本藍は全て手を取り合い青色となります(図2)が、化学藍は手を取り合うものが1/6しかありません(図3)。
このため化学藍の青色の色素の粒は小さくなります。
綿を藍で染めるという事は、綿の繊維の一本一本にタコの足の吸盤のような穴があり、これが多く束となっています(図4)。
この綿を染め液の中に漬けると、バラバラの黄色の藍の粒が綿の穴の中に入ります。
この時、染液の中で綿は黄色となります。染め液を絞り落とし、空気に触れさせると、粒が2つにつながり青色となり、染まった事になります。これが本藍は粒が大きいため、綿の穴から粒が出られなくなります(図5)。化学藍は粒が小さいため、穴から出やすくなります(図6)。
本藍で染めた物は、白い綿製品と洗っても色移りしません。化学藍は色移りするので注意。
これは、洗濯で落ちた藍が本藍は大きいため綿の穴の中に入りませんが、化学藍は粒が小さく、綿の穴に入ってしまうため色移りする事になります(図7)。
そのため、本藍で染めた物は、絞り柄、型染めなどで、白の柄を出しても洗濯で白い部分が青くなることはありません。
また本藍(すくも藍)と化学藍をブレンドして染める方法を、割り建て(わりだて)と言いますが、これも市場では「本藍染め」となり流通しています。
これは、すくも藍はコストが高くつくため、安く染めるための手法で、これも化学藍の部分が色移りするため、白い綿製品とは洗濯できず「絞り」などの白柄も消えてしまいます。
上述したように、藍と一口に言っても以下のようにあります。
  • ●すくも藍(蓼藍)で染めた物
  • ●インド藍で染めた物
  • ●琉球藍で染めた物
  • ●化学藍で染めた物
  • ●割り建て(ブレンド)で染めた物
これらは、それぞれ色調が違います。

また、藍に良く似た色の化学染料ナフトール(久留米かすりの機械織などで使われている)で染めた製品も「本藍染め」となっている物を見かけますが、これは色落ちもしません。

当店の見解としては、日本国内では「本藍染め」とは、すくも藍(蓼藍)のみで染められた物を称して言うべきだと思っております。
「インド藍染め」「割り建て」と藍染めを説明し、消費者を惑わす様な、紛らわしい表現はやめてほしいものです。

【本藍染め製作工程】


染める前に予め、糸で縫いつけたり、タコ糸で縛ったり、ロウをつけたりして、柄を出す。
柄を出すために欠かせない作業である。
ここでは、Tシャツ胸元に円を描くように縫い、その縫った先を染まらない布で隠し、白く丸い柄を出してみることにする。

本藍染めの瓶の中。染液の状態では、藍は酸化結合しておらず1つ1つ散々のため黄色。Tシャツも黄色となっている。

1回目の染め液を落し酸化発色させる。
空気に触れると青色となっていく。

2回目の本藍染め。藍の青色に染め液の黄色が乗り緑色となっている。
染め液を落し酸化発色させる回数を重ね濃く染めていく 。

5回目の本藍染め。
Tシャツは濃い緑色になっている。

8回目の本藍染め。
Tシャツはさらに濃い緑色になっている。

11回目。かなり濃く染まっている様に見えるが、これにはすくもの灰汁等、不純物が多く付着している。洗い落とすとまだ淡い藍色。

14回目。Tシャツはさらに濃い黒っぽい緑色となっている。染め液を落し発色させる。濃く黒く光るぐらいになる。藍の調子で染めの回数は異なる。
表面に乗っているだけの不安定な藍を落す 。

酢で中和する。本藍染め液はアルカリ性(ph10.8~11.8)なので、念の為酢で中和し、色止めとする。

日陰干しをして完成。これがSinの普通の濃さの色の藍色。もっと回数を重ねれば濃くなり、少ないと淡くなる。Sinは濃い本藍の色を好む 。